介護 – gonta https://hiro-gear.com Sun, 13 Sep 2026 08:47:26 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=7.1 脳梗塞の父に贈る、世界に一つの専用スマホアプリ「お手伝いさん」を作った話 https://hiro-gear.com/2026/09/13/%e8%84%b3%e6%a2%97%e5%a1%9e%e3%81%ae%e7%88%b6%e3%81%ab%e8%b4%88%e3%82%8b%e3%80%81%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ab%e4%b8%80%e3%81%a4%e3%81%ae%e5%b0%82%e7%94%a8%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b%e3%82%a2%e3%83%97/ https://hiro-gear.com/2026/09/13/%e8%84%b3%e6%a2%97%e5%a1%9e%e3%81%ae%e7%88%b6%e3%81%ab%e8%b4%88%e3%82%8b%e3%80%81%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ab%e4%b8%80%e3%81%a4%e3%81%ae%e5%b0%82%e7%94%a8%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b%e3%82%a2%e3%83%97/#respond Sun, 13 Sep 2026 08:38:38 +0000 https://pp.hiro-gear.com/2026/09/13/%e8%84%b3%e6%a2%97%e5%a1%9e%e3%81%ae%e7%88%b6%e3%81%ab%e8%b4%88%e3%82%8b%e3%80%81%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ab%e4%b8%80%e3%81%a4%e3%81%ae%e5%b0%82%e7%94%a8%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b%e3%82%a2%e3%83%97/ import mermaid from 'https://cdn.jsdelivr.net/npm/mermaid@10/dist/mermaid.esm.min.mjs'; mermaid.initialize({ startOnLoad: true });

きっかけ:父が話さなくなった

父が脳梗塞で倒れました。

幸い命に別状はなかったものの、後遺症として言語障害と記憶障害が残りました。ゆっくり話せばこちらの言っていることは理解できるのですが、自分から話そうとすると言葉がうまく出てこない。そのことが歯がゆく、次第に人前で話すこと自体を避けるようになりました。

話さなければさらに話せなくなる。この悪循環をなんとかしたい。そんな思いから、あるアプリを作り始めました。

市販の「シニア向けスマホ」では足りなかった

まず考えたのが、いわゆる「シニア向けスマホ」や「かんたんスマホ」です。しかし、これらは「ボタンや文字が大きい」というだけの汎用品であり、父が抱える具体的な問題には対応できませんでした。

父の問題は、大きく分けて以下の3つでした。

  1. 話し相手がいない: 人前で話すのを避けるようになり、会話の機会が激減している
  2. 外出先で迷子になる: 記憶障害により、外を歩いていると帰り道がわからなくなる
  3. スマホの設定を壊す: あちこち触ってしまい、Wi-Fiが切れたり、機内モードになったり、音量がおかしくなる

これらを解決するアプリは、探しても見つかりませんでした。なければ作るしかない。そう決めて、AI(Gemini)と一緒に開発を始めました。

「お手伝いさん」という名前

アプリの名前は「お手伝いさん」にしました。

80歳の父にとって、「ランチャー」や「サポートバディ」といったカタカナ英語は意味不明です。また、「介護」や「老人」といった言葉も避けたかった。純粋な日本語で、優しく、それでいて意味がすぐわかる名前。「お手伝いさん」がぴったりでした。

アイコンは、優しい顔をしたロボット。「これが助けてくれるんだな」と直感的にわかるデザインにしました。

5つの機能:すべて父の困りごとから生まれた

① 「会話」ボタン:AIが話し相手になる

これが一番の核心機能です。

ボタンを押すとGoogleのAIアプリ「Gemini」が起動します。Geminiは音声で会話ができるので、父はキーボードを打つ必要がありません。

AI相手なら、こんな心配がありません。

  • 話し方がおかしくても、笑われない
  • 同じことを何度聞いても、嫌な顔をされない
  • 急かされない。自分のペースでゆっくり話せる
  • 時間や場所を選ばない。いつでもどこでも練習できる

父が再び「話す楽しさ」を取り戻すための、気兼ねのないリハビリパートナーです。

② 「家へ」ボタン:迷子を防ぐ

外出先で「ここどこだ?」となった時、このボタンを押すだけ。

Googleマップのナビが起動し、現在地から自宅までの徒歩ルートを一発で案内してくれます。検索したり住所を入力したりする必要は一切ありません。

技術的には、GoogleマップのナビゲーションAPI(google.navigation)を直接呼び出すことで、「自宅」を正確に認識させています。単純な「自宅」検索だと、全然関係ない場所に案内されることがあり、ここは苦労したポイントでした。

③ 「迎えにきて」ボタン:SOSの現在地送信

ボタンを押すと、スマホのGPSから現在地の緯度・経度を取得し、GoogleマップのURL付きで家族にSMSを送信します。

送られるメッセージはこんな内容です。

今ここにいます。迎えに来てください。
https://maps.google.com/?q=35.xxxx,139.xxxx

受け取った家族がリンクをタップすれば、地図上で父がどこにいるかをすぐに確認できます。「迷子になったかもしれない」という不安に対する、家族の側の安心材料でもあります。

④ 「電話」ボタン:家族にワンタップ発信

ボタンを押すと、事前に登録した最大3名の家族がリストで表示されます。名前をタップすれば、そのまま電話がかかります。

電話帳から探す必要はありません。「電話」→「名前を選ぶ」。たった2ステップです。

⑤ 「掃除」ボタン:壊れた設定を一発修復

高齢者がスマホを使うと、こんなことがよく起きます。

  • 「音が出なくなった」(マナーモードや音量が変わっている)
  • 「ネットにつながらない」(機内モードがオンになっている)
  • 「電話がかかってこない」(Wi-Fiが切れている)

おそらく本人はいつ触ったかも覚えていません。そんなとき、「掃除」ボタンを押すだけで、以下を自動で行います。

  • 音量を30%に設定
  • マナーモード(バイブ)に切り替え
  • 機内モードやWi-Fiの状態をチェックし、問題があれば設定画面を開いて対処を促す

原因がわからなくても、とりあえず押せば直る。それが重要でした。

工夫したポイント

ホーム画面ごと置き換える(ランチャー化)

このアプリは、スマホの「ホーム画面」そのものを置き換えます。つまり、スマホを開いたら常にこの「お手伝いさん」の画面が表示されます。

これにより、余計なアプリを開いたり、設定をいじったりする余地がなくなります。「やれることを減らす」ことが、安全につながるのです。

「迷子にならない」フローティングボタン

Geminiで会話を始めたとき、「どうやって元の画面に戻るの?」となるのは目に見えていました。

そこで、どのアプリを開いていても画面の端に常に浮かぶ「フローティングボタン」を実装しました。アイコンは「お手伝いさん」のロボットの顔で、タップすれば一発でホームに戻れます。

ホーム画面(お手伝いさん)が表示されているときは自動的に非表示になり、別のアプリに移動すると自動的に再表示されます。邪魔にならず、必要なときにだけ現れる設計です。

レスポンシブ対応(画面サイズへの自動適応)

スマホは機種によって画面の大きさがバラバラです。あるスマホではちょうどよくても、別のスマホではボタンがはみ出したり、小さすぎたりします。

そのため、アイコンや文字のサイズは固定値ではなく、「画面の幅の○%」という割合で指定しています。どんなスマホでも同じバランスで表示されます。

画面の回転をロック

スマホを傾けると画面が回転して、何が何だかわからなくなる…というのも高齢者あるあるです。「お手伝いさん」は常に縦画面に固定しており、どんなに傾けても回転しません。

開発の裏側:AIと一緒に作った

実は、このアプリのKotlinコードはほぼ全て、AI(Gemini)との対話の中で書き上げました。

「こんな機能が欲しい」と日本語で伝えるだけで、AIがコードを書き、ビルドし、APKファイルを生成してくれます。実際に使ってみて「アイコンが小さい」「家への案内がおかしい」とフィードバックすれば、数分で修正された版が出てきます。

プログラミングの知識がなくても、「こんなことに困っている」という想いさえあれば、AIがそれを形にしてくれる時代が来ています。

今後の展望:Google Playへの公開も視野に

現在は父専用のオーダーメイドアプリですが、同じような悩みを持つご家族はたくさんいらっしゃると思います。

今後、以下のような汎用化を行い、Google Playでの公開も視野に入れています。

  • 家族が自由に連絡先や自宅住所を登録できる「設定画面」の追加
  • 起動するAIアプリをGemini以外(ChatGPT等)からも選べるようにする
  • Googleの審査基準への対応(プライバシーポリシー等)

ちなみにGoogle Playの開発者登録料は25ドル(約3,500円)の初回買い切りのみです。Appleの年願約1万円と比べると、個人開発者にはかなり優しいです。

まとめ:「困っている」から生まれたアプリ

「お手伝いさん」は、単なる便利アプリではありません。

父が再び話せるようになるための、安心して外出できるための、そして家族が少しでも肍を撫で下ろすための、「想い」から生まれたツールです。

テクノロジーやAIがどんなに進化しても、大切なのは「目の前の人の困りごとを解決する」というシンプルな動機だと、改めて実感しています。

同じような状況で悩んでいる方の参考になれば幸いです。

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